Page 1
飛行場の安全と住民の生活の安心のために
飛行場問題を考える
市民の会事務局
042-485-6389
松下 亘男
2008 年
10 月号
体験飛行を1.5 倍に増加
飛行場
まつり
去る8月 26 日、調布飛行場対策協議
会が開かれ、東京都からあった提案を、
すべて了承した。その中には、飛行場ま
つりの体験飛行の1.5倍化や、ドクタ
ーヘリの導入など、毎日の騒音被害を受
けている立場からは、到底看過すること
のできないような内容も含まれている。
了承するに当たり、周辺住民に配慮す
るような発言は、当会会員であるM委員
以外からは、ほとんどなく、この協議会
のあり方そのものが、問われる内容であ
った。さらに言えば、現在、この協議会
の結論が、事実上、調布市の飛行場政策
となっているが、市議会の特別委員会の
権限強化等の抜本対策が必要なのかも
知れない。
体験飛行の増加
体験飛行は、昨年 14 回であったのに
対して、今年は、なんと 21 回である。
調布市の説明によると、調布、府中、三
鷹3市の地元枠を設けたことから、増加
したという。しかし、それでは本末転倒
である。そもそも、なぜ地元枠を設けた
のか。
地元枠を設けるきっかけとなったの
は、大須賀市議の粘り強い働きかけであ
る。3年前の、平成 17 年8月 26 日の、
調布市議会調布飛行場等対策特別委員
会(以下、特別委員会)において、次の
ように発言している。
「体験飛行なんですけども、対象者、
来場者の中から抽選で搭乗者を決定す
るとありますよね。そうすると、飛行場
まつりに来たどこの市民であろうが乗
せるということになるかと思うんです
が、私はそれは制限を加えてもらいたい
と思います。まず第1の制限は、当然地
元3市に居住する者。それから、第2と
しては、私、できるだけ子供たちを乗せ
てあげたいんです。実際に去年の実績で
子供たちがどのくらいいるかわからな
いんですけども、単純な話、飛行機が大
好きな大人よりも、子供たちを乗せたい
ということです。それが聞き入れられる
かどうかはちょっとわかりませんけれ
ども、一応検討に加えていただきたいと
いうことで伝えていただけるとありが
たいと思っています。
1点目についてはぜひ強く希望しま
す。当然、地元の関係で飛行場まつりは
やるわけですから、全然関係ない、ただ
の飛行機好きの人が乗りたいと言って
頑張ってもらったって、はっきり言っ
て、私は嫌です。当然地元3市の方に限
定していただきたいと思っています。」
さらに、1ヶ月後の9月 29 日の特別
委員会では、大須賀市議は、「前回の特
別委員会のときに、体験飛行について参
加者を限定できないかという質問をし
ました。限定の内容は、調布、三鷹、府
中の3市民に限ると。それ以外の市民
は、飛行場の迷惑とは関係ないわけです
から、たまたまこの日に来て飛行機が好
きだから乗るなんていうことは、地元の
市民として不愉快きわまりないという
理由で限定していただきたいという話
をしたんですが、その検討結果はいかが
だったでしょうか。」と述べている。
このように、地元枠というのは、そも
そも、日常迷惑を被っている市民への、
還元という意味合いで、設けられたもの
なのである。さらに言えば、飛行場まつ
りそれ自体も、当初は、普段迷惑をかけ
ている周辺住民への、せめてもの恩返し
という趣旨で始まったものであり、「ま
つり」の時間帯は、離島便も含めて、す
べての飛行は禁止されていたものであ
る。
それが、2002 年から、「航空への理解
を深める」などという、とんでもない目
標を掲げて、体験飛行を実施するなど、
反・被害住民のイベントと化していった
のである。(うら面へ続く)
【前回までの要約】
調布飛行場に計器飛行を導入という計画があるが、「計器飛行はやらない」と
いうのが、都営空港化の際の、都と地元3市の重要な合意であった。なぜならば、
計器飛行の目的は、「悪天候でも飛ばす」ということに尽きるからである。とこ
ろが、最近、「計器飛行が導入されても、たいした変化はない」という、ウソの
説が流されている。
「離島便に限る」というウソ
計器飛行を導入しても、「離島便にしか認めないから、騒音は大丈夫」
という話がある。本当に、離島便にしか認めないのだろうか。そんな保証
は、どこにもない。それどころか、近年の計器飛行に関する動きを見ると
き、それは事実に反すると言わざるを得ない。
ドクターヘリ問題
例えば、別項で報じているように、今年の8月 26 日に、調布飛行場対
策協議会は、ドクターヘリ用の大型ヘリの、新規導入を認めてしまった。
では、このドクターヘリの場合は、どうなるのであろうか。
そもそも、この計器飛行問題が浮上した背景には、後日記していくよう
に、離島からの、都議会への請願書があった。その中には、現在の離島便
は、緊急患者輸送にも使われているので、計器飛行を認めてほしい旨の記
述があった。
実際のところ、現在、離島で緊急患者が発生すると、ヘリコプターで、広尾の
都立中央病院に搬送している。調布の離島便では、それ相当の検査の必要がある
人が、都心の病院に通院する上で、利用しているようで、緊急患者を搬送するこ
とは、現実的にない模様である。かつて、緊急患者を搬送したという話のあった
際に、病名や病院名を追及したところ、東京都は回答できなったが、そういうこ
とのようである。ただ、ここで大切なことは、緊急患者輸送という話が、計器飛
行という話につながっていったという事実である。これだけは、頭に入れておく
必要があろう。従って、一旦、計器飛行が認められてしまえば、それをドクター
ヘリにもという話に進んでいってしまう危険性は、きわめて高いと言わねばなら
ない。
そして、実のところ、問題はそれにとどまらないのである。(続く)
第 104 号
調布飛行場
対策協議会
調布市で、飛行場を担当してきた、行
政経営部政策企画課の小杉課長が、10
月1日付で転任となりました。職務の
性格上、いろいろと賛否はありました
が、まずはお疲れ様でした。
後任は、同課からの柏原主幹。

Page 2
着陸に失敗!! 調布でまた事故
去る9月 26 日、調布飛行場で、埼玉
県桶川市のホンダエアポートからの小
型機が、着陸に失敗し、味の素スタジ
アム脇の草むらに突っ込むという事故
が発生した。調布飛行場管理事務所の
発表によると、機体は北側から着陸を
試みたが、突風のため、うまく行かず、
滑走路上をバウンドしたため、再浮上
を試みたところ、速度が上がらず、滑
走路をオーバーランして、緑地帯で停
止したとのことである。
再発防止策は?
事故原因は、正式には、航空・鉄道
事故調査委員会から、後日発表される
はずであるが、ここで今考えられる問
題には、なぜ突風が吹きそうな天候な
のに、着陸しようとしたのか、という
のがある。着陸に許可を与えたのか、
それとも、管制官がいないために、不
許可という手続きが採れなかったのか。
あるいは、全く天候を把握できていな
かったのか。この辺のところは、再発
防止策が取れるかどうかに関
わってくるだけに、注視していかねば
ならない。
何のために来たのか
ここでもう1つ、見落としてなら
ないのが、その飛行目的である。調
布飛行場では、給油のみを目的とし
た飛行は、原則禁止されている。し
かし、この飛行機は、調布に少々滞
在した後、関西方面に向かう予定に
なっていた。給油目的なのではない
かということで、調査してみた。し
かし、謎は深まるばかりであった。
詳細については、さらに調査を進
めた上で、記載していくが、少なく
とも、現時点で言えることは、調布
飛行場管理事務所に残されて記録
は、着陸時間も含めて、デタラメで
あったということである。
一応、飛行目的は、所長の話によ
れば、整備ということであったが、
申請書には、何も書かれていなかっ
た。しかも、大阪の八尾空港へ、整
備をしに行く途中、立ち寄ったとい
う話であったが、そうであれば、調
布で整備する必要はないであろう。
古い機体なので、本当に八尾まで
飛べるかどうかの確認に来たとい
う話もあったが、そんな機体であれ
ば、そもそも、来させてはならない
はずである。
いずれにしても、今後も調査を続
け、続報をしていくつもりである。
(おもて面から続く)
このように、体験飛行に地域枠を
設けた目的は、「飛行機が好きだから
乗るなんていうことは、地元の市民と
して不愉快きわまりない」から「制限
を加え」るということなのは、明白
であり、この目的から大きく逸脱し
た、今回の暴挙を許すわけには、到
底いかない。
ドクターヘリ問題
今回の、もう1つの大問題は、ド
クターヘリ用の大型ヘリの導入で
ある。機体の騒音値も大きく、緊急
患者輸送ということになると、日の
出から日没まで、離着陸が認められ
る。しかも、市議会の特別委員会で
も調布飛行場対策協議会でも、その
拡大使用の可能性が指摘され、かつ、
その場合、それについては、地元に
は許認可権がない。なぜならば、地
元が相談を受けるのは、新機種の導
入のときであって、同機種の追加の
場合には、協定上、相談ということ
にはならないからである。
さらに、ドクターヘリが、計器飛
行を求めてくる危険性も、否定でき
ない。緊急患者輸送に必要だとか言
って、主張してくることは、大いに
あり得ることなのである。離島便の
経過を見ても分かるように、「軒を
貸すと母屋を乗っ取る」ようなこと
をするのが、調布飛行場の歴史なの
である。
後日、失敗したと思っても、取り
返しのつかないような、不可逆的な
決定をする場合には、もっと慎重な
対応が必要なはずではないか。何と
も、軽はずみな決定をしてくれたも
のである。
雑な医療政策
現在、東京都は、多くの反対を押
し切って、都立の八王子小児病院、
清瀬小児病院、梅が丘病院を廃止し
て、府中の医療センターに統合しよ
うとしている。身近にあってこその
医療施設であって、それぞれの地域
に、きめ細かく配置してはじめて、
住民の健康と安全が守られるので
ある。特殊な技術を要する病の場合
を除けば、特定の大病院に、広範囲
の医療を集中させるというやり方
は、大きなデメリットもたらすばか
りであろう。
ドクターヘリというのは、基本的
に、こういった方向の医療政策の産
物であり、飛行場問題を離れて考え
てみても、決して褒められたもので
はない。
医療は、ヘリで運ばれて、初めて
受けられるのではなく、それぞれの
地域で十全に受けられる方向で、整
備されていくべきで、無医村をなく
す努力が、まず求められているので
ある。
重大な局面ということで、8月の
市議会の特別委員会と、飛行場対策
協議会の両方とも、傍聴した。特別
委員会では、それなりに、被害住民
に配慮した発言もあったが、協議会
の方は、本当にひどかった。
K委員は、「極論を言えば、体験
飛行を増やしても良い」などと発言。
頭に「極論を言えば」などと付けれ
ば、何を言っても良いのか。被害住
民にそっぽを向いて、調布JCの立
場を優先させていた。
T委員は、友人から「『ドクター
ヘリが決まって良かったわね』と言
われた」と発言。そんなこと、あろ
うはずがない。この件については、
関係者以外知らないし、この時点で
は、まだ決まってもいなかったのだ。
さすがに、まずいと思ったのか、後
日公表された会議録からは、この部
分は削除されていた。
当会のM委員の発言だけが救い
であった。「機能拡大させない」等
の3原則を守るよう、高らかに主張
していた。