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飛行場の安全と住民の生活の安心のために
飛行場問題を考える
市民の会事務局
042−485−6389
松下 亘男
2008 年
8月号
ジェット化問題を追及
国交省と
会 合
前号でもお知らせしたとおり、読売新
聞は5月 13 日に、国交省がビジネスジ
ェットの普及策を検討しはじめ、その基
地として、調布飛行場も視野に入れてい
る旨の報道をしました。その後、6月5
日に、日経が、調布の名前こそ出さなか
ったものの、同様の報道をしました。
国交省が、ビジネスジェット機の
普及促進のために専用ターミナル
(飛行場)を検討…そこで調布飛行場
も検討されているという新聞報道が
あり、事実を確認するために、7月
28 日、猛暑の中を『飛行場問題を考
える市民の会』の皆さんと一緒に、
国交省に行きました。
日本共産党の笠井亮衆議院議員を
通じて、国交省の役人から話を聞く
機会を設けてもらったのです。新聞
報道によると、世界的に利用が広が
るビジネスジェットの日本での普及
を促すため、国交省は、発着手続き
の緩和や、首都圏の空港に専用ター
ミナルを設ける検討を始めたとのこ
と。新たな空港用地を確保するのは
困難なため、米軍横田基地(東京と)
の共用化や、調布飛行場(同)桶川飛
行場(埼玉県)の利用などを視野に入
れている…というのです。
国交省の説明では、「普及促進」の
必要性も含めて、これから調査をお
こなう段階であり、具体的なことは
何も決まっていないとのこと。まし
て、小型とはいえジェット機の離発
着のためには、1500∼1800mの滑走
路が必要であり、800mの調布飛行場
では困難…「絶対」とは言えないが、
可能性は低いとのことでした。
まずは、ひと安心ですが、今後と
も飛行場拡大の動きには注意して、
しっかりと対応していきたいと思い
ます。
調布市長に懇談申し入れたが、市長
は多忙で日時の調整ができず、5月 16
日に、代わりに政策企画課と懇談しま
した。
市長が、ふれあいミーティングで村
田さんの質問に対して、「管制官が撤
退しても、代替措置で一年間無事故だ
った。問題はない」という発言に、住
民としては、法的根拠のない交通整理
で、緊急時の対応と無法パイロットの
取締りなどに対応できないとい
う不安があることを訴えました。
計器飛行の導入についても、市長
は、きっぱりと反対の態度を示せま
せん。雨の日も飛行する危険があ
り、さらに、夜間まで延長される危
険があります。住民の安全を最優先
に決断してほしいと要望しました。
市長に伝えますということで懇談
は終わりました。
4月には、東京都の猪瀬副知事が、調
布のジェット化に言及していることも
あり、当会では重要事態と受け止め、7
月 28 日に、国交省の担当役人と会い、
真意をただしました。
国交省によると、その件については、
5月 30 日に、報道発表を行ったという
ことでした。それは、「『ビジネスジェ
ットの利用促進調査』の概要について」
というもので、その中には、「首都圏に
おける専用空港の検討」という項目もあ
りました。ただし、調布に関する言及は
ありませんでした。調布の場合、滑走路
の延長が必要となるが、それが困難だと
の説明でした。
この文書については、日刊航空が6月
3日に報じていますが、やはり、同様に
調布は困難だと記しています。ただし、
前記の4月の猪瀬発言では、滑走路の延
長にも触れていることもあり、油断は禁
物です。
「首都圏における専用空港の検討」が
開始されたという事実を、看過すること
は絶対にできません
【前回までの要約】
調布飛行場に計器飛行を導入という計画があるが、しかし、「計器飛行
はやらない」というのが、都営空港化の際の、都と地元3市の重要な合意
であった。なぜならば、計器飛行には多種多様なものがあるが、その目的
は、「悪天候でも飛ばせるようにすること」に尽きるからである。
激増する飛行回数
計器飛行を導入すると、本当に、飛行回数は激増するか。ここでは、逆
説的であるが、「あまり増加しない」というウソの説をもとに考えていく
ことにする。
ウソの説とは
「計器飛行を導入しても飛行回数はあまり増加しない」というウソの説
とは、次のようなものである。「計器飛行は離島便に限定される上、調布
飛行場では年間離着陸回数の上限が定められているので、増加したとして
も、たいしたことにはならない」と。
この説の主なウソとは、「離島便に限定される」という点と、「年間離着
陸回数が守られる」としている点であるが、それは、後述していくことに
する。まずは、このウソの説によると、飛行回数はどうなっていくという
のかを見てみることとする。
調布飛行場の飛行回数などは、年によって、かなり、ばらつきがあるが、きわめ
て単純化して言えば、年間離着陸回数は 20000 回、そのうち離島便は 7500 回、
それ以外は 12500 回、そして、離島便の就航率は 75%である。計器飛行で、仮
に就航率が 100%になったとしても、離島便は、7500×
=10000 回、それ
以外は 12500 回のままであるから、合わせて 22500 回と、年間離着陸回数の上限
23000 回の範囲内に収まるはずだというのであろう。
こんなペテンの説に引っかかってはならない。これは、とんでもないウソなの
である。(続く)
第 103 号
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去る6月 17 日、東京都議会の第2回
定例会で、自民党の代表質問を行った
服部ゆくお都議は、さまざまな放言を
繰り返す、猪瀬副知事のあり方を、厳
しく問いただした。その中で、4月の
猪瀬発言を取り上げ、「地元との合意を
一方的にないがしろにするものだ」と
批判した………ように見えた。ところ
が、・・・・・
服部都議の質問
服部都議の質問の、この件に関す
る主な部分は、次の通り。
「最後に、副知事のあり方につい
て質問いたします。 昨年の第二回
定例会に提案された猪瀬氏の副知
事選任同意に当たって、我が党は、
知事に対して二点の申し入れを行
いました。
まず、猪瀬氏が以前、都や知事の
主張と相入れない発言を行ってき
た点についてです。就任後、猪瀬氏
の発言が都の意向に反することの
ないよう、知事に十分なる調整をお
願いしました。
次に、国を含め対外的な対応は、
知事の代理を同氏が担当され、内政
面については他の三副知事にゆだ
ねるべきであると申し上げました。
………しかし、一年前の懸念は現実
のものとなっています。幾つかの実
例を挙げた上で、最後に質問をいた
します。
まず、第一点目は、調布飛行場の
問題についてであります。
猪瀬副知事は、この四月、調布飛
行場の視察をし、その際、空港が有
効利用されていない、地元との協定
に縛られ、今どきジェットがだめな
どはないなどと発言をしました。
調布飛行場については、平成九年
に地元三市との間で、年間離着陸回
数、飛行方式などを定めた協定、覚
書を締結し、十三年に開港いたしま
した。十八年十一月には、計器飛行
の導入に向けて、都と地元市が検討
を開始いたしました。同時に、総合
スポーツ施設整備計画の凍結解除
についても協議を進め、この第一回
定例会で、我が党の吉野幹事長の代
表質問で知事の答弁を引き出した
ように、味の素スタジアムに隣接す
る都有地に総合スポーツ施設を整
備することが決まり、今後、計器飛
行に向けて本格的な検討を開始し
ようとしたやさきに猪瀬副知事の
発言がありました。
この発言に対しては、地元の方々
から、地元との合意を一方的にない
がしろにするものだ、このようなこ
とでは、もう計器飛行は認められな
いと、抗議の声が我が党に寄せられ
ています。島しょにとって悲願であ
る計器飛行導入にマイナスとなる
発言をされた副知事としての責任
は、極めて重い問題であります。
……………」
服部質問の留意点
服部質問で注意しなければならない
ことは、「猪瀬発言が問題なのは、計器
飛行導入の障害になった」としている
点と、「総合スポーツ施設と計器飛行導
入は、バーター(交換・交換条件)で
あることを強く臭わせている点である。
計器飛行導入に、強い執念を持ってい
ることをうかがわせる発言は、忘れる
わけにはいかない。
石原知事の回答
石原知事は、都議会においては、
この問題について直接答えず、「最
後に、猪瀬副知事に関するご指摘に
ついてでありますが、まさに博覧強
記ですぐれた理論家の猪瀬氏は、緻
密な分析をもとに、道路公団の改革
などに成果を上げてこられました。
そうした手腕を見込んで副知事を
引き受けてもらいまして、以後、期
待にたがわず、私を十分に補佐して
くれております。
しかし、ご指摘はご指摘として、
しかと承ります。賢明な猪瀬氏のこ
とでありますので、今後、適切に判
断、発言し、行動していただけるこ
とと思っております。」と、副知事
をかばった。
しかし、3日後の6月 20 日の記
者会見では、次のようなやりとりを
した。
【記者】猪瀬氏(猪瀬直樹)が副知
事になられてからもうすぐ1年が
たちますが、知事は、これまでの1
年間を振り返って、猪瀬さんを副知
事としてどのように評価している
か教えてください。
【知事】非常に助かっていますね。
調査能力はあるし、速いし、思いつ
きもあるし、都庁のスタッフが考え
つかないことも思いついてくれま
すしね。そういう点では非常に評価
しています。
【記者】先日の都議会の代表質問で
は、異例ともいえる与党自民党から
の批判がありましたけれども、改め
てこの件に関して知事はどのよう
にお考えでしょうか。
【知事】だから、それ、答えたじゃ
ないですか。そのとおりですよ。
【記者】知事としては、何かその後、
猪瀬さんとそのことに関してお話
しましたか。
【知事】しません。ただ、やっぱり
ね、行政に関しては、それまで行政
の主体者と現地側とのいろいろ話
し合いとか、そういう伏線がある訳
ですからね。だから、あそこの調布
の飛行場の件なんかもね、やっぱり
そういうものをちょっと斟酌(しん
しゃく)して発言されると、誤解を
生じなくて済むんじゃないかって
ことは注意しました。注意というか、
申しました。
ハットリイノセ
=五十歩百歩
「五十歩百歩」とは、それほどの違
いがないことや本質的には差がないこ
とを意味する故事成語で、類句に、「ど
んぐりのせいくらべ」や「似たり寄っ
たり」がある。その昔、思想家の孟子
(もうし)が、魏の国の恵王(けい
おう)に、「双方の兵士が戦ってい
ます。逃げていく兵士がいます。五
十歩逃げた者が、百歩逃げた者を笑
ったらどうでしょうか?」とたずね
たところ、恵王は、「そりゃあよくな
い。どっちにしろ逃げたのだから」と
答えたという話から生まれた言葉
である。
それで、「協定違反の計器飛行を
もくろんでいる者が、ジェット化を
口にした者を笑ったのはどうでし
ょうか?」とたずねられれば、我々
は答えるでしょう。「そりゃあよく
ない。どっちにしろ地元をないがし
ろにしたのだから。」
飛行場といえば、毎日ふりそそぐ
騒音問題がある。滑走路の近所では、
飛行機が離着陸する度に、テレビや
電話が聞き取れないのはあたりま
え。あの度重なる不快音が神経を病
む人を生み、日常生活に支障をきた
すことさえあると聞く。
空港近くは、これだけではない。
それは、危険に対する不安感である。
報道によれば、つい最近、長崎空港
を離陸した直後の飛行機が異常を
感じ、空港に戻る途中で海に突っ込
んだという事故があった。もしこれ
が、そばに海もない調布で起きたら
どうだろう。人家に、学校に、病院
に、介護施設に激突するに違いない。
実際に、昭和 55 年に中学校の校庭
に墜落し、死傷者が出た。
そんな飛行場のそばで生活する
調布市民の身になって考えたい。本
当に調布に飛行場が必要なのだろ
うか。